コムクロシャンプー0.05%は外用頭部乾癬治療剤・外用合成副腎ホルモン剤としてマルホ株式会社が2016年5月31日に申請し、2017年3月30日に製造販売承認を受けたものです。薬価収載は2017年5月24日、発売は同年7月11日となっています。
主成分はクロベタゾールプロピオン酸エステルで、デルモベートの商品名でグラクソスミスくらいから発売されています。デルモベートには頭皮の病変部分に数滴落とすスカルプローションという剤型があります。
今回のコムクロシャンプーは流し落とすことを前提に設計された剤型で、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを添加物に含むことにより泡立ち、その泡を洗い流すことによってクロベタゾールプロピオン酸エステルも流し落とすことになるという発想です。
従って、スカルプローションのスーパージェネリックではなく、新剤形医薬品として承認申請され、有効性はあり、副作用が少ないという目的を達しているということで製造販売承認にいたっています。
(写真はマルホ株式会社のプレスリリースより引用)
添付文書情報
禁忌
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 頭部に皮膚感染症のある患者〔感染を悪化させるおそれがある〕
- 頭部に潰瘍性病変のある患者〔皮膚の再生が抑制され、治癒が遅れるおそれがある〕
組成
成分含量
1g中:日局クロベタゾールプロピオン酸エステル 0.5mg
添加物
エタノール、ヤシ油アルキルベタイン液、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、 pH調節剤
注)青太字はシャンプーとして配合されているものです。
効能・効果
頭部の尋常性乾癬
用法・用量
通常、1日1回、乾燥した頭部に患部を中心に適量を塗布し、約15分後に水又は湯で泡立て、洗い流す。
使用上の注意
- 本剤投与中には患者の病態を十分観察し、投与4週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないこと。
- 本剤の使用により症状の改善がみられない場合又は症状の悪化をみる場合は使用を中止すること。
- 眼及び眼瞼皮膚へ付着した場合、白内障、緑内障を含む眼障害が発現する可能性がある。眼及び眼瞼皮膚へ付着しないよう注意し、付着した場合は直ちに水で洗い流すこと。
適用上の注意
使用時
- 薬剤の浸透性が高まる可能性があることから、塗布部位を覆わないこと。
- 眼及び眼瞼皮膚へ付着しないよう注意し、付着した場合は直ちに水で洗い流すこと。
使用後
本剤使用後は、完全に洗い流し、よく手を洗うこと。
保管方法
- 本剤を子供の手の届かない、高温にならない所に保管すること。一般のシャンプー等と区別して保管すること。
- 開封後、4週間以上経過したものは使用しないこと。
引用
マルホ株式会社 コムクロシャンプー0.05% 添付文書
医薬品医療機器総合機構、薬事審議会での論点
主要評価項目について
会社側の意見
一般的に乾癬の評価に用いられているPASI(psoriasis area and severity index)は全身の状態を評価する指標であることから、今回は頭皮部分の乾癬の評価である事から複数の皮膚所見を独立して評価し、病変範囲をも評価可能であるPSSI(Psoriasis Scalp Severity Index )を用いた。主要評価項目としてはベーススコアラインからの減少率が75%以上の患者の割合とした。
結果は国内第Ⅲ相試験でプラセボ群7.6%(6/79例)に対して本剤群29.5%(23/78例)と有意差をもってプラセボ群よりも効果が高かった。
機構の考え
患者の説明に問題はなく、有効性は示されたと考える。
副次評価で60歳以上の効果が減弱してに関して
会社の考え
60歳以上ではプラセボ群17.4%(4/23例)、本剤群5.9%(1/17例)で群間差は-11.5(95%信頼区間-30.6~7.6)という結果第Ⅲ相試験の副次的評価であらわれている。海外第Ⅲ相試験では65歳以上でのこのような減弱は認められていない。患者背景で60歳以上の層でプラセボ群と本剤群で差を見られたのは乾癬の罹患期間のみであり、これは年齢と関連する項目である。この結果は年齢に起因するものではなく、海外の結果から見ても高年齢層に対する本剤の有効性を否定するものではない。
機構の考え
会社の考えを受け入れ、現段階では高齢者を対象から除外する必要はないと考える。ただし、その理由に関しては製造販売後調査などで検討する必要がある。
目の刺激性に関して
会社の考え
日本では27例中1例で角膜の斑点が認められたが、臨床的に意義のある変化ではない。適正使用すれば目の安全性で大きな問題を生じる可能性はないと考える。
機構の考え
会社の意見を受け入れる。。ただし、眼及び眼瞼へ付着しないように注意すること、付着した場合は直ちに水で洗い流すことを注意喚起する必要がある。
臨床的な位置付け
ストロングクラスのステロイドローション製剤と同様の位置づけで頭部乾癬の治療選択肢の一つとなる事、用法に特徴があることから患者および医師の希望により選択される事があることが推定されることが会社と機構で意見が一致した。
専門協議
本剤は今までの頭部乾癬に対するステロイド剤の治療に対して、新しい投与法を提案するものであることから、患者に十分説明し、指導することが重要であり、そのために適切 な資材が必要であるとの指示をだした。
他剤の併用に関して
第Ⅲ相試験では効果、安全性をノイズなく捉えるために、既存の乾癬治療薬の併用は禁止したので、他剤との併用に関する情報はないことから、製造販売後調査などで情報収集することとなった。
長期の使用に関して
第Ⅲ相試験においては4週間の投与としたが、皮疹等が残っている症例も見られたことから、長期投与に関して製造販売後調査で長期の安全性と有効性に関するデータを収集することとなった。
薬事・食品衛生審議会第一部会の論点
添付文書の記載に関して
製品には保管方法に関しては記載されているが、添付文書には記載されていない。患者に配布する資材に記載しているとのことであるが、医師・薬剤師が説明のよりどころする添付文書には記載されていないのは問題である。(記載することとなった)
シャンプー製剤の意義について
この薬剤で洗髪は可能か。(この薬剤で洗髪も可能であり、その後通常のシャンプーでの洗髪も可能)
泡立ての意義は(泡が消えるまでしっかり洗い流すという意味。患者用資材の方で詳しく説明している)
シャンプーとシャンプータイプの違いは(前者は洗剤が入っていて、後者は入っていない)
副腎機能に対する影響の測定法
コルチゾールを測定しただけでは分からないステロイドが存在する。いわゆる交差性のあるステロイドはコルチゾール測定値に薬剤の濃度が入っている可能性がある。ただし、ACTHは交差性がないのでこちらの測定値の方が信頼性がある。(海外試験でACTH刺激前後における血中コルチゾール濃度を測定しているので、交差性は不明であるが、副腎機能には影響を与えていないと考えられます。)
眼の副作用に関して
緑内障以外の眼の刺激性に関しては基剤に起因すると考えられるので、添加物をマイルドなものに変更すれば抑えられるの可能性は(日本では眼の刺激性に関する有害事象は報告されていないが、製造販売後調査等において検討し、問題があれば基剤の変更などの対応を考えるよう申請者に伝える)
参考
コムクロシャンプー0.05% 審議結果報告書
2017年3月2日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録
薬価算定
算定方式
類似薬効比較方式(Ⅰ)
比較薬
デルモベートスカルプローション0.05%(グラクソ・スミスクライン)
補正加算
なし
規格間比
なし
海外平均価格調整
外国価格
米国 967.3円、英国11.90円、独国32.90円、仏国17.30円 外国平均価格20.70円(米国は平均に入れていない)
調整前 32.80円 調整後28.20円
算定薬価 0.05%1g 28.20円
終わりに
最近は珍しい新規投与経路による申請です。薬剤そのものが既に有用性が確かめられているものです。1回塗布して、15分後に洗い流しても効果は落ちずに安全性は格段に上がったということです。実際にそれを確かめる必要があることから臨床試験はほぼフルセットが必要となっています。
後発医薬品でスーパージェネリック狙いでも第Ⅲ相試験が必要と思われます。先ほどの「15分だけ薬剤と接触すれば効果は同等で安全性は上昇する」のは開発前は仮説ですから。
ここまで試験をしたので、補正加算をつけてもいいような気がしますが、第Ⅲ相試験でデルモベートスカルプローションとの比較は盲検下で行うことが難しく、薬効に関して同等性、副作用は明らかに減るという仮説を検証するには第Ⅲ相試験の例数が増える事を考えるとの判断が会社にあったのかもしれません。