ナルラビド錠はヒドロモルフォン塩酸塩を有効成分とした即効剤で、ナルサス錠は同じ有効成分の持続製剤です。
海外ではモルヒネ、オキシコドンともに強オピオイド鎮痛薬として癌疼痛治療薬のガイドラインに掲載されています。日本では未承認であったことから「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」がムンディファーマに開発要請を行ったのは2010年12月でした。
その後、開発は第一三共プロファーマ株式会社と第一三共株式会社に引き継がれ、2016年3月31日に第一三共プロファーマ株式会社が新薬承認申請を行いました。
モルヒネとオキシコドンの換算比は経口でヒドロモルフォン:モルヒネ:オキシコドン=6:30:20となっています。
添付文書情報
禁忌
- 重篤な呼吸抑制のある患者[呼吸抑制を増強する。]
- 気管支喘息発作中の患者[気道分泌を妨げる。]
- 慢性肺疾患に続発する心不全の患者[呼吸抑制や循環 不全を増強する。]
- 痙攣状態(てんかん重積症、破傷風、ストリキニーネ中毒)にある患者[脊髄の刺激効果があらわれる。]
- 麻痺性イレウスの患者[消化管運動を抑制する。]
- 急性アルコール中毒の患者[呼吸抑制を増強する。]
- 本剤の成分及びアヘンアルカロイドに対し過敏症の患者
- 出血性大腸炎の患者[腸管出血性大腸菌(O157等)や 赤痢菌等の重篤な細菌性下痢のある患者では、症状の悪化、治療期間の延長をきたすおそれがある。
原則禁忌
(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)
細菌性下痢のある患者[治療期間の延長をきたすおそれが ある
効能・効果
中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
用法・用量
ナルラピド錠
通常、成人にはヒドロモルフォンとして1日4~24mgを4~ 6回に分割経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。
ナルサス錠
通常、成人にはヒドロモルフォンとして4~24mgを1日1回 経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。
医薬品医療機器総合機構の指摘
食後投与による曝露量の増加について
日本人の健康成人におけるPK試験で食事により曝露量が増えることに関して注意喚起の必要性を指摘した。
申請者は食事の影響は増量の1段階よりも少ないこと、FDAのガイドラインで従った食事の影響をPPK解析を行った結果患者でも大きな変動は見られなかったこと、海外ではCmaxが25%低下するがAUCが35%増加するものの臨床的には意味のある変化ではないと回答したが、機構は医療現場に情報を提供する必要があるとし、添付文書に食事の影響に関する記載が行われた。
評価試験に関して
評価試験における対照薬はオキシコドンの即放錠と徐放性製剤が使用された。
疼痛評価はVAS値を10mm単位で区切り評価したもの使用し、非劣性マージンを10mmと設定した。
上記の設定及びその結果に対して機構の指摘はなかった。
安全性に関して
機構は、悪心・嘔吐、傾眠に対して比較薬よりも発現率が高いことを適切に情報提供する必要があるとした。
イレウスに対しては重篤化したものがあったことから、医療現場に注意喚起を求めた。
乱用・依存性は他のオピオイドと同様と考えられるが、臨床試験では明らかにはなっていないので、製造販売後に情報を収集し、現場に適切に報告する必要があるとした。
他のオピオイドからの切り替えに関して
ガイドライン的には即放剤の切り替えは考えられるが、徐放剤の切り替えに関しては使用されないと申請者は考えている。
機構は徐放剤の切り替えの使用経験がないことを明確に示すことが必要であり、製造販売後に切替例があった場合には情報収集に務めるべきと考えた。
1医療機関の資料保管が火災で消失した件
適合性書面調査で1医療機関の資料保管が火災で消失したことが判明。医療機関の被験者データを除外した上で、審査をおこなった。
薬価算定
算定方式
類似薬効比較方式(Ⅱ)
比較薬
成分名:オキシコドン塩酸塩水和物
会社名:塩野義製薬
販売名:オキシコンチン錠40mg
薬価:891.40円
一日薬価:1782.80円
算定薬価
ナルサス錠24mg 1782.80円
規格間比:0.8748(オキシコンチン錠40mgと20mg)
薬価算定会議での議論
外国薬価に比べて高いのではないかとの疑問が出たが、開発要請があったということで、第一三共プロファーマさんが承認を取得したという経緯から、外国薬価に対する調整がないことがルールであるとの薬剤管理官の説明があった。
また規格間比が高いことから(用量が半分になっても×0.8748で計算される)2㎎状の薬価が高いのではないかとの質問がでた。薬剤管理官はそういうルールになっているとの返答でしたが、質問者は「ルール」が納得できませんという返事であったが、結局は薬剤管理官の主張通りとなった。
最後に
がんの疼痛管理では「オピオイドスイッチング」という言葉があります。英語では(Switching Opioid)と語順が違います。
その中で海外のガイドラインではヒドロモルフォン塩酸塩が候補のひとつに古くからなっていますが、日本では薬価収載されていなかったことから、学会の希望に応える形で厚生労働省が開発会社を公募して、第一三共が開発を行い、第一三共プロファーマ(薬剤生産や治験薬生産を行う子会社)が承認申請が行われました。
申請資料はほぼ非臨床と臨床ほぼフルセットで行われています。助成金も出していることから、非臨床に関しては外国のデータも使用可能かと思います。(古すぎて使えなかったのかもしれません。)